お客様は神様です。11

お客様は神様です。

老人が神様だとは思えないが、そもそも僕は神様を見たことがない。想像のもので実在するわけがないと思っている。言ってみれば否定派というわけだ。実際に自分の目で見たものしか信じない。この現実か幻想かわからない空間では実際に見た事には当てはまらないと僕は考える。だから神様なんていない。この目で見ても。

「何を難しそうな顔をしておるのじゃ?わしが神様だという事がしんじられないのか?」と老人が不思議そうな顔で言う。

僕は愛想笑いをして「神様という存在がいるかもしれないとは思っていましたが、実際にお目にかかったことがなかったので実感が湧きません。すみません。」と僕は心の様子は伏せて、それなりに返事をしておいた。これでいいだろう。へんに媚びるのも違う気がする。ご飯はごちそうになっているが、それとこれとは別問題だ。

記憶が定かではないが、小さいころから先生とか、偉そうな大人が大嫌いだった。特に男の人は偉そうに命令したりする。は向かえばげんこつをぶつけられる。僕はそういう環境で育った気がする。大人の女の人も苦手でガミガミとうるさい。そうこう考えていると、そもそも僕は自分以外の人間が嫌いなのだという事に気が付いてほっとしたようで自分にがっかりした。

どれもこれも記憶があいまいなので何とも言えないが、まずは目の前の神様とやらに、ここはどこで記憶があいまいなのは何故か聞いてみようと思った。

「あの神様、質問がございます。よろしいでしょうか?」僕は出来るだけ丁寧に切りだした。

「ん?なんじゃ?言うてみい。」と神様は少し偉そうに言った。

「えーと、ですね。ここはどこなのでしょうか?そして僕は誰なのでしょうか?自分でも変なことを言っているのはわかります。焦っているから記憶がおかしくなっていると思っていましたが、どうやらそうではないようで困っています。どうか教えてください。」と僕は困り果てた顔で聞いた。

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