お客様は神様です。17

お客様は神様です。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。冴えないのには冴えない理由があるのじゃ。ところでおぬしはお腹は空いとらんのか?」と好き神はサラリーマンに聞いた。

「あ、はい。えーと、お腹ですか?空いているような、空いていないような・・・。」とサラリーマンがモジモジと言うと、それとは裏腹にお腹がグーっと鳴った。

それを聞いた僕と好き神は顔を合わせて笑ったが、当の本人はというと耳は真っ赤になり、いかにも恥ずかしそうに下を向いている。

「お腹が鳴るのは健康の証拠じゃ。さっきはこやつもどデカく鳴らしとったわい。わはは。」と好き神は僕のお腹が鳴った時の事を言って笑っている。その時の顔が最高に楽しそうで、僕は恥ずかしかったが嫌な気はしなかった。

そんな僕を見て勇気を得たのかサラリーマンは口を開いた。「わ、私は、えーっとお腹が空いているのだと思います。頭がぼーっとして、それはいつもですが。でもいつもよりもぼーっとしている気がします。はい。」と、この男にしては頑張って発した言葉なのだろう。一生懸命さを感じた。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。そなたは頭に糖分が回っとらんのじゃないか?頭や気を使いすぎると頭がぼーっとするもんじゃ。そんな時は甘い物が一番じゃぞ。よし、わしがご馳走してやるから、何か甘いものでも注文せんか。」そう好き神が言ったので、僕はサラリーマンの方をチラっと見たが、サラリーマンも僕の方をチラっと見ていたので目がバシッと合ってしまった。

そして、サラリーマンはその時、僅かに笑ったように見えた。僕の見間違いかと思ったが、それまでは死んだ魚の目のような遠くを見ているような目をしていたが、僕と目が合ったときは完全に目の焦点が僕の瞳孔にピントが合っていて、それは生きた魚の目だった。

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