お客様は神様です。3

お客様は神様です。

すると、コツコツと音がなる先で別の音がした。

「ジリリリリリーン、ジリリリリリーン」

今度ははっきりと聞こえた。

そして何の音かもわかった。昔、おじいちゃんの家で聞いたことがある古い電話の音だと思った。

そう思った次の瞬間に電話の音が止まり「はい?」と誰かの声がする。声は高かったが男の人のような声に聞こえた。声の主が電話に出たのだろう。

「はい?、もしもし?・・・・うん、それで?・・・うん、それは無理じゃのう。人に何かを頼む時にはお願いしますじゃろがい。はい、却下。そもそも、具体的にどうしろという事も無い。それではどうしようもないからのう。それじゃ。」

と怒っているようで怒っていないトーンの声で男の人はそう言って電話を切ったようだった。

声の主は男の人で、口調からして老人のようだった。

さきほどのコツコツの正体は、きっとその老人だったのだろう。少しだけではあるが、安心して心に余裕ができた僕は思い切った行動にでることにした。こういう時は勢いというものが大事だ。つぶっていた目もいつの間にか開いていることに気が付いた。

・・・いち、にの、さん!!

心の中でカウントダウンして僕は隠れていた柱から少しだけ顔を出した。

すると、コツコツの先のその床で僕の知らない何かが動いている。

やはり、老人ではあったが、想像していたよりもはるかに小さいのだ。

人の形はしているが、その文字通り人形のようだと思った。

背中にゼンマイだとか、電池などの動力があるわけでは無さそうなのは雰囲気でわかる。

老人は小さい人形のようなのに生きていて、動いているのだ。

コツコツは老人の足音と、持っている杖の音なのだと見ている物と音でわかった。

また一つ、分かったことが増えたが疑問は全く解消されない。

この老人が何者なのか、危険なのか、安全なのか、ここはどこなのか、現実ではなく夢か幻なのか・・・。

ハッキリ言って、僕の頭は今までで一番のパニック状態に陥っており、まともではないのだけは完全に理解できた。

そして、このパターンもあるのかと思いたくもなかったがこう思った。

僕は、死んだのか?と。

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