お客様は神様です。12

お客様は神様です。

ここがどこなのか?それは僕にとってはとても重要でお腹がある程度満たされた今では、最重要なことであり何としてでもハッキリさせておきたい事であった。

思い切って聞いてはみたものの老人がその答えを知らなかったり、はぐらかしたり嘘をつくことも考えられるがそこまで悪い人にも見えなかったので聞いてみる価値があると考えた。

よく考えてみると、ここはどこ?私は誰?などという事を聞いている状況は僕の人生で聞かれる事はあっても、自分から聞くことなどないと思っていたが、今はそれほどの状況ということなのだ。

「ここか?わからんでもしょうがない。わかるわけがないのだがのう。よし。教えてやろうか。ここは、ワシが作り出した空間じゃ。そもそも存在すらしておらん。」老人は一切の迷いもなくそう言ってのける。

僕の頭の中はまだポカンとしているが、老人は話をつづけた。

「ここは、現実ではない。でも存在しないわけではない。次元の狭間じゃ。おぬしが眠りから覚める直前に入り込んでしまった空間なのじゃ。だから意識はもうろうとしていてなんも覚えておらんのじゃ。ただ欲だけは残っとる。だから腹は減るというわけじゃ。」老人は少し自慢気にそういうと止めていた手を動かし、サラダの上に乗ったトマトをフォークで食べた。

老人が言った事は嘘ではないのだろう。何となくそう思ったが、根拠も証拠も何も無い。でもこの何もわからない空間でも何かを信じたいという気持ちはあり、それが僕の心を少し安心させるならそれはそれでありなのだろうと思い、信じてみようと決めたのだ。

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