お客様は神様です。4

お客様は神様です。

やはり死の恐怖はある。得体のしれないものや状況を感じると無意識に身を潜めたり心臓が恐怖を強い鼓動で知らせてくる。本能とも呼べるものだろうか。

それは訓練をしていれば克服できるものだが、訓練をしていたとしても無駄なこともあるだろう。

まして、この状況は想定外で、寝起きというハンデが付いている。

テレビで見る寝起きドッキリは、きっとこれよりもマシなんだろうと、現実逃避をして気持ちを落ち着かせようとするが、僅かな時間でここまで考えることができる状態は不自然でしかなく、僕の脳内や体内で様々な興奮物質が分泌されているのだろう。僕の頭にパトライトが付いていれば確実に赤く光って回っている。そんな状況だ。

僅かな時間であったがそんなことを考えていたが、小さい老人は手に持った杖と靴をコツコツと鳴らしまだ歩いている。そして窓際の席まで歩くと「ぎーっ」とテーブルの椅子を引き、「ぽてっ」と座った。

やはり、老人であっても、小さくても、デパートの食堂は窓際がいいのだろう。そう思うと少し親近感を覚えた。

老人はテーブルで食堂のメニューを眺めている。きっと何かを注文するのだろう。「うーん、これにしようか。」と独り言を言うと、テーブルにある呼び出しのベルを「チーン!」と鳴らした。さほど時間がかかっていないので、あまり悩まずに決めたのだろうか。

すると、厨房の方からメイド服の女性がシルバートレーを持って出てきた。正直に言うと、あまり似合ってはいない。本来ならその姿に違和感を感じるはずだが、この状況では何が出てきてもおかしくはないと考えると、似合ってもいないメイド服がまともに見えるから不思議だった。

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