お客様は神様です。14

お客様は神様です。

どうやら目の前の神様は好きな物を司る神らしい。それは本人も言っていたし、僕の好きな物の記憶だけを戻す事が出来た事で証明された気がする。

しかし、どうも頭がすっきりしない。それは自分の名前や人の事が僕の記憶に無いことで、それは神様にも伝えていた。

「そりゃそうじゃ。」と言ってスルーされたが、それはどういうことなのだろう。半分だけ脳が作動するような不思議な感覚の中で、僕の頭はバットに頭をつけてくるくる回った時のように実際に目が回っているわけではないが、物事を考える感覚が混乱している。

混乱を解くためにできる事を考え、一つずつ整理してみようと思った。まずは、目の前の神様の事。好きな物を司る神様なので好き神と呼ぶ事にした。好き神のおかげで僕の中の”好き”という部分の記憶は解放されたようだ。しかし、自分を含めた誰の事も思い出せていない。嫌いな物も思い出せない。強烈な体験をした場合に記憶が消える事があるらしいが、どうやらそういう事では無さそうだ。

好き、嫌い、自分はどっちだ?それがわからない。好きではない事はわかる。それじゃあ、嫌いなのか?自分が?自分なのに?自問自答してみるとわからない事もわかってくる。そしてふと思った疑問を好き神に聞いてみる事にした。

「あの、神様。僕が自分の名前も思い出せないのは、自分の事を嫌いだからでしょうか?」すると好き神は「ふぉふぉふぉ。まあ、好きではないという事だけは確かじゃのう。でも、物事は好きか嫌いかだけでは片づけられないものもあるのじゃ。例えば、おいしい料理は好きじゃろ。おいしくない料理は嫌いじゃろう。では普通の料理はどうじゃ?」と好き神は僕に質問してきた。

僕は急な質問に少しびくっとしたが、間違えても廊下に立たされたり記憶が消されたりそういうペナルティーは無いと高を括って最初に思いついた答えを言ってみた。

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