お客様は神様です。18

お客様は神様です。

サラリーマンにメニューを渡すと、メニューを真剣に見始めた。それまでの目つきとは違い、やはりイキイキとしているように感じられ、僕は少しだけうれしく感じた。

パラパラとメニューをめくり、最後の方のページにあるデザートのメニューを食い入るように見る。

ソフトクリーム、アイスクリーム、クレープ、パフェ。どれもおいしそうだが、ひときわ目を引くのがソフトクリームだろう。通常のソフトクリームはせいぜい5・6段くらいが一般的ではあるが、この店のものは10段はある。もはやソフトクリームのタワーだった。

いったいどれを頼むのだろうと興味津々でメニューをチラ見していると、メニューをなぞる指がピタっと止まった。

やはり、ソフトクリームなのか?と思ったが、意外にもサラリーマンの指はイチゴの乗ったショートケーキを指していた。

え?なんで?と思ったが、それは人の自由だろう。でも、衝動的に「どうしてソフトクリームじゃなくてショートケーキなのですか?」と聞いてみた。少しうざがられたら嫌ではあったが、聞いてしまった後なので仕方がない。

サラリーマンの表情は緩み「子供の頃からショートケーキが好きなんです。イチゴの乗ったヤツが。」と少し頬を赤く染めてうれしそうに笑っている。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。好きな物を話す時、人は実にいい表情をするもんじゃのう。」と好き神が言う。サラリーマンの好きな物の記憶はきっと好き神が事前に思い出させていたのだろう。

「そなたもどうじゃ?人の好きな物を食べるというのもいいもんじゃ。もちろん、わしも食べるがのう。」と僕にも進めてくるので「それじゃあ、僕も同じのをお願いします。」と便乗して注文することにした。

店員を呼ぶと、またまたメイド服のウエイトレスが飛ぶようにやってきた。何度見ても・・・言葉にできない。

「イチゴのショートケーキを三つじゃ。」と好き神が頼むと、ウエイトレスはかしこまりました。と言って厨房に戻っていく。

まさか、今からケーキを焼くわけでもあるまいし、きっとすぐにできるのだろうなぁ。と想像していると、この想像が終わるのと同時にウエイトレスが厨房から出てきた。

シルバートレイの上には皿が3枚。すべてにイチゴのショートケーキが乗っていた。怖くなるほど早いスピードだったが、この空間ならなんでもありなのか。と僕も少しこの空間に慣れ始めていることに気が付いたのだった。

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