ストーリー

お客様は神様です。

お客様は神様です。13

ここがどこなのかは解った。いや、解ったことにしようと思う。そう心に決めようと思ったが、しっくりくるわけがない。かなりばかげた話ではある。ただ、信憑性はなくとも疑う事も無意味な気がする。そうなればこの話を信じるしか他にはないのだろうと僕は腹を...
お客様は神様です。

お客様は神様です。12

ここがどこなのか?それは僕にとってはとても重要でお腹がある程度満たされた今では、最重要なことであり何としてでもハッキリさせておきたい事であった。 思い切って聞いてはみたものの老人がその答えを知らなかったり、はぐらかしたり嘘をつくことも考えら...
お客様は神様です。

お客様は神様です。11

老人が神様だとは思えないが、そもそも僕は神様を見たことがない。想像のもので実在するわけがないと思っている。言ってみれば否定派というわけだ。実際に自分の目で見たものしか信じない。この現実か幻想かわからない空間では実際に見た事には当てはまらない...
お客様は神様です。

お客様は神様です。10

老人の事などお構いなしに、僕はパスタに夢中だった。これが、かつ丼ならガツガツと食らいつくことができるし、多少行儀が悪いかもしれないが許されるだろう。しかし、パスタはガツガツ食べるわけにはいかない。冷静を装い、丁寧にそして素早くフォークを回し...
お客様は神様です。

お客様は神様です。9

しばらく老人の幸せな時間と同時に僕の苦痛の時間がつづいていた。 小さな老人は一口一口が少ない。料理も老人にとってみれば大食い自慢たちが挑んでいる”食べきればタダ”になる量に等しいだろう。 何口も食べているのに一向に減っていないような錯覚すら...
お客様は神様です。

お客様は神様です。8

テーブルの上には、おいしそうな料理が置かれていた。ナポリタンとサラダとカツが一枚の皿に盛り付けられている。 僕のゴタゴタがあったので、少し料理が冷めてしまったかと心配をしたが、まだ料理からは湯気が立っている。実においしそうで、見ているだけで...
お客様は神様です。

お客様は神様です。7

手招きして呼ぶ小さな老人の元へ僕は急いだ。こんなヘコヘコしている所は、誰にも見られたくない。しかし、ここは現実なのか幻想なのかわからない空間で、僕の知る限りでは、ここにいるのは小さな老人と、メイド服を着た店員と、おそらく厨房で料理を作ってい...
お客様は神様です。

お客様は神様です。6

「なんじゃい、猫か。」と老人は少しがっかりとした口調で呟いた。意外にも猫の鳴き声で誤魔化せたことに驚きながらもすごくほっとした。 そうこうしていると、メイド服を着た店員がシルバートレイに出来立ての料理を乗せ、老人のテーブルに向かうところだっ...
お客様は神様です。

お客様は神様です。5

老人は、メイド服を着た店員に何かを注文していたが、声が小さくてよく聞こえなかった。 注文を受けた店員はそそくさと厨房へと戻っていったが、僕はまだ動けないでいた。 僕は手と膝を床につけた四つん這い状態で顔を少しだけ柱から出し聞き耳を立てている...
お客様は神様です。

お客様は神様です。4

やはり死の恐怖はある。得体のしれないものや状況を感じると無意識に身を潜めたり心臓が恐怖を強い鼓動で知らせてくる。本能とも呼べるものだろうか。 それは訓練をしていれば克服できるものだが、訓練をしていたとしても無駄なこともあるだろう。 まして、...